本記事では、Solana上のDeFiプラットフォーム Kaminoファイナンス が提供する Multiply(マルチプライ) 取引 (https://app.kamino.finance/earn/multiply) について解説します。
MultiplyにはJLPのMultiplyもありますが、以下はLST(リキッド・ステーキング・トークン)に限定して解説しています。
本記事は執筆時点のKaminoファイナンスの公式docsを元にしています。最新の情報はそちらをご参照ください。
Kamino Multiply は、 Kaminoファイナンス が提供するレバレッジ・レンディング機能です。
これにより、ユーザーは自分の保有する LSTなどの利回り資産 に対して、流動性を損なうことなく 複利的にレバレッジ を効かせた運用が可能です。
担保となる資産を預けた後、その担保価値に応じてSOLを借り入れ、借り入れたSOLを再び担保資産に換えて投入するサイクルを自動化します。
(マルチプライ、ルーピング、ぐるぐる、レバレッジ・レンディングなどと呼ばれます)
picoSOL/SOLペアの7.5倍マルチプライを例にすると
というポジションを構築する仕組みです。
LSTなどの利回り資産にレバレッジをかけてより効率的な運用が可能になります
Kamino Multiplyでは、eMode(Elevation Mode) と呼ばれる仕組みを活用し、担保資産と借入資産が価格連動性を持つ場合に、通常より高い貸出比率(Loan-to-Value, LTV) を設定できます。
たとえば、JitoSOL/SOLペアのMultiplyでは、通常のLTVは75%(最大4×レバレッジ)ですが、eModeを適用することで90%のLTVが可能となり、最大10×レバレッジ が実現可能になります。
これにより、同じ担保資産に対してより大きな借入額を許容でき、より高いレバレッジを構築できます。
Flash Loan(フラッシュローン) は、担保なしで一時的に資産を借りられるDeFiの技術です。Kamino Multiplyでは、以下の手順でFlash Loanを活用します。
Flash Loan手数料は0.001%が掛かり、さらに借入利率(Borrow APU) と スワップ時のスリッページ が実質コストとして反映されます。
従来、LST(Liquid Staking Token)の価格を市場価格(DEX上の価格)で評価すると、流動性が低い場合に多額の取引がされた場合、LSTが市場で大きく 価格乖離(デペグ) する可能性がありました。
Kaminoでは、LSTオラクル として Stake Poolの内部データを用い、理論価格 を算出します。
具体的には:
**LST理論価格 = ステークされたSOL / 発行されたLSTの量**
このアプローチにより、市場でLSTが 価格乖離(デペグ) しても 清算が発動しない よう制御されます。
市場価格 ではなく 理論価格 を参照するため、流動性不足や多額の取引による誤った清算リスクが排除できます。
LSTが価格乖離(デペグ)しても清算は発生しません
・元本:1 SOL
・レバレッジ倍率:7.5倍
・picoSOL/SOL 価格比:1.2
・picoSOL APY:8%
・SOL借入金利:6.5%
・LTV:6.5 / 7.5 ≒ 86.67%
・総エクスポージャー:1 SOL × 7.5 = 7.5 SOL相当
・picoSOLへの変換:7.5 SOL ÷ 1.2 = 6.25 picoSOL
・SOL借入額:7.5 - 1 = 6.5 SOL
・LTV:6.5 / 7.5 = 86.67%
・ステーキング報酬(8%): 7.5 SOL × 8% = 0.60 SOL
・借入コスト(6.5%): 6.5 SOL × 6.5% = 0.4225 SOL
・純利益: 0.60 - 0.4225 = 0.1775 SOL
・実質APY(元本1 SOLに対して): 0.1775 / 1 = 17.75%
1 SOLの元本で、レバレッジ7.5倍(LTV ≒ 86.67%)をかけると、年間17.75%の実質利回りが見込まれます。
Kamino Multiplyは、多くの機能を組み合わせることで効率的なレバレッジ運用 を実現する一方、高度なリスク管理 が不可欠です。
特にLSTオラクルによる理論価格参照によってデペグ清算リスクが排除されているとはいえ、他のリスク要素は依然として存在します。
本記事を参考にMultiply戦略を採用する場合は、リスクとリターンのバランスを見極めながら活用してください。
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